麗しの彼は、妻に恋をする

明るい髪、白い肌。
恐らくはハーフ。

晴れてもいないのに女優のように大きな帽子を被り、サングラスをかけた女性は、
この田舎には不似合いなピンヒールの靴を履き、ヒラヒラの服を身に着けている。

「こんにちは、冬木柚希さん」

「こんにちは……」

その時点で嫌な予感がした。

わざと冬木という名字を告げるところに、大きな意図を感じたからだ。

サングラスを外した目を見て、思い出した。

彼女は和葵と一緒に行ったパーティにいた。

会場で、なにかを感じて振り返った柚希の目に映った、氷のように冷たい瞳。

女性はあの時と同じ、薄い色の瞳でジッと柚希を見据える。

そして「シズク ジルと言います」と名乗った。

「あなたに見て欲しいものがあるの」と言って、ジルはバッグから取り出した一枚の紙を差し出す。

「冬木さんがね、大変なの」

それは週刊誌の記事のコピーのように見えた。

【冬木陶苑、贋作を売る】

「え?」