聞けば好きなようにしたらいいと言うばかりだし、彼が音楽を聴いているとわかって掃除機をかけても、怒らない。

掃除機をかけながら、どうするのか見ていると、その間は雑誌に目を落としたり本を整理したりして、耳を使わない別のなにかをしているようだった。

料理を始めればキッチンまで覗きに来て、片付けを手伝ってくれたりもしてくれる。

もしかしたら、表に出さないだけで不満が溜まっているのかもしれないが、少なくとも柚希にはその片鱗も見えなかった。

だって彼はキッチンでも、愛しているよと囁くのだから。

もうずっと前から体のほうは彼の言いなりで、反発しようとする柚希の意志など無視するし、せめて心だけはと必死に抵抗していたけれど、今はもうそれもあきらめた。

だからこの前は、いままでの形だけと違って。

――心から好きよって言った。

『好き、大好きよ、和葵さん』

言ってしまったら、彼の興味も無くなってしまうと思っていたけれど、もうそんなことは考えないようにした。

自分の心に正直でいたい。