妻として何もすることがなかったわけじゃない。祖母の言う通り、自分は前に進もうとせず立ち止まっていただけだった。

「ありがとう柚希。陶器以外にも興味を持ってくれてうれしいよ」

「――ありがとうだなんて。私、もっともっと知りたい。陶苑のことも和葵さんのことも」

「僕のなにが知りたい?」

「えっと。じゃあアルバムがあったら見せてほしい。子供の頃とか」

了解と言って、立ち上がった彼は書斎へと歩いて行く。
その後ろ姿を見つめながら、柚希はようやく彼の妻になったような気がした。