「蘭ちゃんの服はいつも私が買っているの。WEGOやユニクロ、earthなどで買っているわ。美人さんでスタイルがいいと何でも似合うのよね〜」

世界法医学研究所の所長であり、蘭が同居させてもらっている紺野碧子(こんのあおこ)が言う。ゼルダたちは「そうなの!?」と驚いていた。

蘭は気にすることなく仕事を続ける。特別、服やオシャレにこだわりがあるわけではない。あまり派手すぎず胸元でいつでも輝いているエメラルドのブローチが似合うものであれば何でもいいのだ。

「へえ、意外です……」

圭介がそう呟いた刹那、部屋に置かれた電話が鳴り響く。すぐに蘭は受話器を手にした。

「もしもし。世界法医学研究所の神楽です」

「その声は蘭ちゃんか?」

電話をかけてきたのは、世界法医学研究所によく解剖の依頼をしてくれる桜木刑事だった。

「実は、虐待疑いのご遺体があってな……」

桜木刑事はそう言い、事件のあった場所の住所を告げる。そこは都内屈指の高級住宅街だった。

「その家は……!」

蘭の目が大きく見開かれる。その住所は蘭はよく知っている。記憶が一瞬にして蘇っていった。

『勝手にしろ。その代わり、この家に二度と帰ってくるな』

冷たい声を思い出し、蘭は口を噤む。様子の変わった蘭に碧子たちが心配げな目を向けている。