『この花の名前は蘭。君と同じ名前の花だよ。その花言葉は優雅、そして美しい淑女。いい名前をもらったんだね。君にぴったりの名前だ』

『お前……!他人だけでなく星夜の命まで奪ったのか!?』

『この化け物め!!』

温かい思い出と冷たい思い出が一気に蘭の頭の中に現れる。色々な感情が押し寄せ、まるで溺れた時のように息が苦しくなっていく。

「蘭ちゃん、もう休憩に入っていいわ。無理をしないで」

碧子に声をかけられ、蘭はハッと我に帰る。変わらず全員が蘭を心配げな目で見ていた。

「神楽さん、ここは俺たちに任せてください」

圭介に優しく肩に触れられ、蘭は一瞬肩を震わせる。いつもならば「大丈夫です。続けてください」と言っていたのだろう。しかし、今は三国家の話を続けているこの空間にいたくないと思う気持ちの方が強かった。

「申し訳ありません。お言葉に甘えさせていただきます」

蘭はそう言い立ち上がり、会議室を後にしようとする。しかし、これだけは伝えておかなければともう一度振り返った。