「女のくせに偉そうだな!死体を解剖する職業にしか就けなかったくせに。男の俺の方が優秀だ。生きている人間を救う医者なんだからな!!」

天良が蘭を見下したように言うと、「同感だ」と義彦も頷く。

「女のくせに働いて、男に逆らって、お前を見ているだけで苛立ってくる。女は男の後ろで従うのが決まりだろう」

「本当ですわ!天良ちゃんのあの嫁も全く役に立たないし、どうしてうちに相応わしい女が来ないのかしら?」

晴子も蘭を睨み付ける。桜木刑事と圭介が「それって差別ですよね?」と反論する中、蘭は息を吐いて「失礼致します」と頭を下げる。この人たちが変わることなど、これから先もないのだ。

「いつもあなただけでしたね、星夜(せいや)さん。私の味方でいてくださったのは……」

蘭はポツリと呟き、ブローチに手を当てた。



世界法医学研究所に戻ると、解剖室にすぐさま理央の遺体が運ばれた。蘭は碧子たちに遺体のあった状況だけを伝え、解剖の準備をする。

冷たい台の上に置かれた小さな遺体に、圭介や他の監察医たちの目に悲しみが浮かぶ。

「まだこれから楽しいことがたくさんあったのに……」