「変なこと言ってすみませんでした。でも、言わなきゃ意味ないって、分かったから」
そう言って、その子はベンチから離れ、ぺこっと頭を下げた。
小さくなっていく後ろ姿を見つめる。
学校規定の長さのままの紺色のスカートが、左右に揺れるのを見つめる。
あたしは手のひらを力なく開いた。
長い時間力が入っていたのか、爪の食い込んだ跡がついていて、でもすぐに元のふっくらとした形に戻る。
今、何時だろう。
雨上がりみたいに湿った頬を手のひらでぬぐって、かばんの中のスマホを取りだす。
ロック画面に、アルファベットのAを象ったデザインの画像が浮かぶ。
"生きないと。
生きないと、いけないんです。"
その言葉を反芻する。
あたしは胸いっぱいに息を吸った。
これでもかというくらい吸って、そのまま止めて、最後に一瞬ダメ押しで吸って、長い息を吐いた。

