「いいの?伸ばしてたのに」

私の髪を二本指で耳の後ろにかけながら、あっくんが幅の細い全身鏡に向かって不思議そうに呟く。

「うん、いいの」

そう頷く。同じ鏡に向かって。




部屋に昨日のぶんの新聞紙を広げ、その上に二人羽織みたいにぺたんと座っている姿は我ながら間抜けで、思わず笑ってしまう。

「高校生にもなってさ、こんなんでいいわけ?」

呆れたようにこぼす割には、あっくんだってすきバサミを手に生き生きとしていて、まんざらでもなさそうだ。


「ロングヘアなんて背伸びなことは、やめとくよ」