先輩が右にまっすぐ手を伸ばし、横断歩道を指差す。

青信号になったその道を、先輩は行け、と指している。


私はぎゅっと目をつむり、うわあああああと叫んで駆け出した。




風を切る。手足がもげて飛んで行くくらい、胸を前にして、走る、走る。


空まで続くはしごのように見えたその長い横断歩道は、どうやら下りのはしごだったらしい。

走るというよりももはや転がり落ちるように、私は空から現実へと、全身ではしごを駆け落ちていく。



振り返るな。自分の口から自分の耳へ、そう聴こえた。


背中を押す力強い何かによって、トンネルから押し出されるように小さな体が放り出された。