涙をぬぐうこともできず、ざらざらとした後悔を両手で初めて受け止める。 「好きです……」 初めて声に出した4文字。 あの夏の日、靴箱で、言えずに終わった言葉。 人を殺す凶器なんじゃない、自分の心を切り裂く、言葉。 先輩が死んでしまった事実は変えられない。 塾の裏の錆びたフェンスみたいに、元に戻ることなんて、ない。 私があの日靴箱で言えなかったことも、時間を元に戻して言うことなんて、できない。