「あっちゃん!」 彼女が先輩の背中を自分のかばんで叩く。先輩は背中をさすりながら振り返って、おはよう、と言った。 「なんだよ、その呼び方」 「篤人だから、あっちゃん」 「やだよ、女みたいに呼ぶなよ」 彼女はくしゃくしゃの笑顔で一回くるっと回って見せた。 無邪気なその様子に、先輩の顔がほころぶのを、私はただ見ていた。