世界が真っ白に霞んでいく。 血液があぶくをたてて逆流し、頭の中が熱くなっていく。 言葉とは凶器だ。血の流れない兵器だ。 今、言葉が、私の体を切り裂こうとしている。 自分が傷つかないためには相手を傷つけるしかない。 そう考えて今目の前にいる幼なじみを殺すための言葉を掻き集める。 早く、一つでも、この男の口を塞ぐナイフか銃を私に。 「真帆は先輩の何、なの?」 見つからない。ただのひとつでいいのに。 「真帆は先輩の何でもない」 殺せない。 言葉が出てこない。 「だって先輩、彼女いたじゃん」