「おかしいな、ボタンの裏側からだと針が穴に入らない……」


「………」


「この辺りに刺せばいいはずなんだけど…」


だ、大丈夫かな…。


眉を寄せて難しい顔をしている高塚くんに、思わず心の声が漏れそうになる。


工程としては、まだ半分にも達してない状況だ。


このままだと完成するまでに相当の時間がかかる可能性が…。


それに、手つきも危なっかしい…。


ソワソワしながら様子を見守っていると、高塚くんが“痛っ…”と声を発した。


「指、大丈夫!?」


「針が軽く当たった程度だから平気だよ」


「本当に?」


「うん。血も出てないし!」


高塚くんは爽やかに笑って、こちらに親指を見せる。


確かに大丈夫そうだけど、この感じで作業していたらケガしそう。


見てみぬフリして帰っても気になると思うし…。


私は肩に掛けていたスクバを机の上に置いた。


「高塚くん、その制服とボタンとソーイングセット借りてもいい?」


「えっ?」


「もし迷惑じゃなければ、代わりにボタン付けしようかと思って…」


「でも、琴宮さんの帰りが遅くなるから」


「すぐ終わらせちゃうから大丈夫だよ」


そう答えると高塚くんは申し訳なさそうに頭を掻いた。