「ソーイングセット持ってるの?」
「うん。携帯用の小さなものだけど、常に持ち歩いてるんだ」
高塚くん、私よりも女子力が高い…。
“ほら”とスクバからソーイングセットを出す姿を見ながら感心してしまった。
「でも、家に帰ってからの方がゆっくりと縫えるんじゃない?」
「家だと姉貴が口出ししてきてうるさいから」
「お姉さん…?」
「昔から服作りが好きで、今は服飾の専門学校に通ってるんだ。普段は優しいけど、裁縫のことになるとスイッチが入って途端に厳しくなるんだよね」
「へ、へぇ……」
「実は、このソーイングセットも姉貴に無理やり持たされたんだ。服にトラブルがあった時にすぐに対処できるようにって」
「そうなんだ…」
なんだか、すごいお姉さんだな…。
常に持ち歩いてない私なんて、白い目で見られそう。
「今まで学校や外出先とかで一度も使ったことなかったんだけど、まさか使う日が来るとは…って感じ」
苦笑いしながら針穴に糸をスムーズに通す高塚くん。
この雰囲気だと、あっさり縫いつけちゃいそう。
そう思いながら見ていたのだけれど…。