アイツの溺愛には敵わない


「はーちゃんは嘘が下手だね」


「別に私は嘘なんて…」


「だって俺が帰って来た時、姿を見るなりホッとした表情になってたよ?」


「えっ…」


「心配かけちゃって、ごめんね」


なだめるように頭を撫でた颯己は、先にリビングへと入って行った。


確かに、無事に帰って来たことに安堵はしたけれど。


その気持ちは表に出さずに、素っ気なく出迎えたつもりだったのにな…。


はっきりと表情に反映されてたのか。


自覚がなかっただけに恥ずかしい。


少し熱くなった頬をさすっていると、ベランダに出た颯己が手招きをした。


「はーちゃん、夕日が綺麗だよ」


“早く早く”と急かされ、私は渋々ベランダへとやってきた。


「本当だ……」


空を染め上げる鮮やかなオレンジ色のグラデーション。


こんなに綺麗な夕日、今まで見たことない気がする。


目に焼きつけようと思って眺めていた時。


「はーちゃん、ちょっと涼しくなってきたから、これ着てなよ」


颯己が私の肩に掛けてくれたのは、カーキ色のパーカーだった。