「それじゃあ日曜日は頑張ってね、映結」


「う、うん」


笑顔のお母さんに暗い声で返事をした。


こんなことなら、お母さんに予定を聞かれた時点で“急用ができた”とか適当に嘘ついて逃げれば良かったな。


後悔しても後の祭りだけど。


「ごめんね、はーちゃん。休日に引っ越しの手伝いをお願いしちゃって」


ウインクしながら両手を合わせて、謝る仕草をする颯己。


絶対に“ごめん”とか思ってないくせに、白々しい。


お母さんたちが見ている前で本音を口にするわけにもいかず、代わりに冷ややかな視線を送る。


意地悪な笑みが返ってくるのかと思いきや、颯己は純度の高い笑顔を浮かべた。


何よ…。


その嬉しくてたまらないと言わんばかりの表情は。


引っ越し作業が、そんなに楽しみなわけ?


変なヤツだな…と思いながら、自分の食器を片付けて部屋に戻った。


料理の手伝いに続いて、今度の日曜日は家財の引っ越しの手伝いか。


今から憂鬱だな…。