アイツの溺愛には敵わない


「これ、私が引っ越しの挨拶に行った時に颯己がくれたクッキーだよね」


5才の冬。


引っ越しの挨拶をするために、お母さんと一緒に颯己の家を訪ねたあの日。


人見知りだった私は、お母さんの後ろに隠れて俯いていた。


早く家に戻りたいと思いながら。


そんな時に颯己が私にくれたもの。


それが、このクッキーだったんだ。


「12年前の今日。クッキーを渡した時に少し恥ずかしそうにしながらも微笑んだはーちゃんを見て、俺は恋に落ちたんだよ」


“出会った時からずっと”


颯己が私に告白してくれた時の言葉が頭にこだまする。


本当に最初の最初から私のこと……。


「あれ?でも、私たちが初めて会ったのは24日じゃなくて17日だったような気が」


あのマンションに引っ越して来たのは12年前の12月16日。


その翌日、お母さんと一緒に挨拶に行ったはずなんだけど……


顎に手をあてて首を傾げると、颯己はニコリと笑った。