アイツの溺愛には敵わない


「颯己、来るの早かったね」


「あのメッセージを受信した時には既に電車の中にいたんだ。そろそろ終わる頃かなと思って早めに書店を出たから」


「そうなんだ」


穏やかな顔で私と会話を交わしたのも束の間、すぐに顔をしかめた颯己は吉田くんをギロリと睨んだ。


「んで、お前は映結にどんな内緒話をしたわけ?」


「べ、別に大した話じゃないよ」


「それは俺が判断することなんだけど」


ピリピリとした空気が漂う。


さっき言ってた黒いオーラ全開の颯己って、こんな感じだったのかな。


「えっと、真浦に関する中学時代の思い出話を少々……」


しばし目を泳がせていた吉田くんだけど、颯己の追及から逃れられないと悟ったのか、気まずそうに口を開く。


それを聞いた颯己はどうやら内容を察したらしく、眉を寄せたまま溜め息をついた。


「ったく、どうせそういう系統の話だろうと思った」


「さすが真浦!勘が鋭いな」


「それより、いつまで映結の隣に座ってんだよ」


吉田くんの言葉に取り合うことなく、颯己の低い声が降り注ぐ。


慌ててベンチから立ち上がった吉田くんは、アタフタしながら持っていたスマホに視線を落とした。