アイツの溺愛には敵わない


「なんでアイツから貰ったの?」


少し威圧感がある低い声。


悪いことをしたわけでもないのに、なんだか責められているような感覚だ。


「制服のボタン付けを手伝ったから」


「ボタン?アイツに頼まれたわけ?」


「違う。高塚くんは自分で縫おうとしてたよ。でも苦戦してるみたいだったから、放っておけなかったの」


「……それで代わりに縫ってあげたんだ」


「何か文句ある?」


「うん、大アリ」


即答する颯己を睨むと不機嫌そうな顔が近付いてきた。


「俺以外の男に優しくしないで」


お互いの鼻が触れてしまいそうなほどの距離。


鋭い双眼で見つめられて息をのんだ。


「はーちゃんに“そのつもり”がなくても、相手が勘違いすることもあるから」


私からゆっくりと顔を離した颯己は、机の端に置いてあったチョコレートを手に取った。


「このチョコ、俺が貰うね」


「は?なんで颯己が……」


「甘いものが食べたい気分だったから」


「だったらキッチンにクッキーがあるでしょ」


「チョコがいい」


取り返そうと手を伸ばした私をサラリとかわして、颯己は足早に部屋を出て行ってしまった。