アイツの溺愛には敵わない


「何?課題やってる最中だから手短に済ませてよね」


「古文のノート、貸して?」


「えっ、何か課題出てたっけ?」


「いや、出てないよ。今日の授業で書き漏らした部分があるから、はーちゃんのノートを見せてもらおうかなと思って」


「ふーん」


授業ノートを借りにくるなんて珍しい。


昔から、颯己は黒板に書かれた内容をそのまま写さずに、要点を簡潔にまとめてノートに書いている。


だから、漏れは殆ど出ない気がするんだけど…


まあ、そういう時もあるか。


さっさとノートを貸して部屋に戻ってもらおう。


「ちょっと待ってて。今、持って来る」


颯己から離れて机の方に移動する。


古文のノートを出そうとスクバを開いた、その時。


「お菓子?」


視線を動かすと、机の端に置いたチョコレートをツンツンとつついている颯己が目に映った。


ビックリした……。


気配なく近づいて来るのは心臓に悪いから本当に止めて欲しい。


「チョコレートだよ、それ」


「買って来たの?」


「ううん、高塚くんから貰った」


そう答えた瞬間、颯己の顔が曇った。