……イラストレーターになれる……?なれるわけない。だって、僕の絵を認めてくれる人なんていないから。

「冬都の絵、透明感があって好き。この子の切なそうな表情も好きだ」

輝一は優しく微笑んだまま、僕のイラストを眺める。

「……そうだ。冬都……お願いがあるんだけどさ。俺が書く小説のキャラデザ頼めない?」

「え?」

輝一の言葉に、僕は驚いた。

「俺、趣味で小説を書いてたんだ。昔、小説家になるのが夢だった……でも、もう諦めた」

輝一は空を見上げながら、表情を崩すことなく話し出す。

「……俺が小説を書き出したの、中学1年生なんだけど……誰にも見せなかったんだ。読まれるのが、恥ずかしかったから……ある日、勇気を出して友達に読んでもらって……『面白かった』って一言だけでも欲しかっただけなのに……」

僕は、輝一の話を静かに聞いていた。その時、輝一は地面に視線を落とす。

「でも、友達は俺の書いた小説に対して悪口を言い出して……それから、俺は小説を書くのを止めたんだ。また悪く言われる気がして……でもね」

輝一は、顔を上げて僕と目を合わせると微笑んだ。

「冬都が絵を描いてる姿を見て、小説をまた書いてみようって思うようになって……」