アイビーは少し間を置くと、話し始める。

「何重にも、僕が魔法をかけました。今の状態のまま向こうの世界に行くか、元の状態で向こうの世界に行くことが出来ます」

「どういうこと……?」

アイビーの言葉に、紫月(しづき)は首を傾げた。アイビーは「そう言えば、まだ説明してませんでしたね」と僕らの方を見る。

「……冬都、輝一、大智は分かると思いますが……妖魔は、向こうの世界の人間には見えません」

「そう言えば、あの時……皆妖魔を見てなかったけど……やっぱり、妖魔の姿が見えてなかったんだ」

僕は、1週間前に大きな妖魔が向こうの世界に現れた時のことを思い出した。

「はい。それは、フォルトゥナで暮らす魔法使いも一緒なんです……向こうの世界に行った時、魔力が強い者同士でないと、姿を見ることは出来ない……今のあなた方も同じ状態なんです」

「ふーん……つまり、この状態で向こうの世界に行った時、元の状態の僕らには姿が見える……けど、周りの人には見えないってこと?だから、あの時僕らには妖魔の姿が見えたんだ……」

「……そう言うことです。まぁ、今の状態で向こうの世界に行くのは、妖魔を追いかける時ぐらいしか使い道は無いかもしれませんが……念の為、魔法をかけておきました」