分厚い雲が重なった、黒く染まる空を見上げた。容赦なく顔を打つ雨を前に瞬きをする事さえ忘れ、あの日の事ばかり思い返していた。



7年前。

奏は何も告げずに手紙1枚を残し、私の前から姿を消した。
もうあれから7年経った。

17歳から付き合いだして、20歳まで。私は奏と沢山の思い出を作った。
幼かった恋心。けれど私は本気だった。


’結婚しようね’その約束を信じて疑わなかった、私の初恋。 けれども奏は私の前から姿を消してしまった。

ずっと忘れられなかった。どこに居たって、いつになったって、奏の姿を探さなかった日は無かった。

けれど、3年前駿くんから’付き合おう’と告白されてから、私は奏の面影を探さなくなった。奏と一緒に居た頃の自分は全部捨てた。そうする事でしか自分の心の中から奏を消す方法が思いつかなくて。


一生会わないつもりだった。けれど季節外れの嵐が運んできてしまったのだ、あの忘れられない初恋を。