「こういう場合ってどうしたらいいんだろうなぁ?」

そして困ったように笑う。ちょっと無神経な質問だったかもしれない。言葉の選択肢に間違ったのは、駿くんの表情を見れば分かる。

駿くんの家は少し複雑だ。

高瀬コーポレーションをおじい様から引き継いだ彼の父親は少し厳格だが、立派な人だと思う。

私も数回会った事があるけれど、とても真面目で仕事をきちんとこなした上で、家事まで自分の出来る限りはしてきたような人。

それもそのはず、駿くんのお父さんとお母さんは、彼がまだ幼い頃に離婚している。 だから父子家庭だったのだ。


とはいえ、この歳になるまで再婚をする事もなく男手ひとりで立派に駿くんを育て上げた人だ。

そんな父親の背中を見て育ってきた駿くんだからこそ、きちんとしていて立派な人になったのだと私は思う。

そして駿くんは、離婚された自分のお母さんの事も悪くは思っていない。

離婚した後も同じ市内で暮らしていた駿くんの母親は、小さなスナックを経営している少しだけ派手な人だった。


彼が最も嫌うような人生を歩いてきている様な人だけど、嫌いになりきれないのは、彼が母親にとても似ているからだと思う。

涼しい目元をしていて、すっきりとした美人な顔は駿くんにとても似ている。そして彼がなんだかんだ離婚後も彼女に会いに行っているのは私も知っている。

どうしようもない人なんだけど。そう言う駿くんの口調はとても優しいものだった。