「笑真?どうした?何か他に見たい映画あった?」

駿くんが携帯を覗き込んできたから、思わずそれを見えないように後ろに隠した。

「ううん。特にないよ。駿くんが言ってた奴見よう」

その言葉に駿くんは満足気に笑った。
ホッと胸を撫でおろす。


駿くんはきっと、アニメなんか見ない。

どれだけ映像が美しく、他者の心に深く投げかける素敵なメッセージ性を持った作品だとしても、絶対に見ない。

もしも私がこの映画を強く見たいと希望したとしても、その想いを尊重してくれるだろう。 けれど同じ感覚で一緒には楽しんでくれないと思う。そんな想いをするのならば、初めから駿くん好みの映画を見る方が絶対に良い。

「お昼ご飯、良さげなお店を見つけたんだ。映画を見たらそこに行こう」

「本当?駿くんセンス良いもんね、楽しみ」

「絶対に笑真も喜んでくれると思う」

久しぶりの休日デート。

駿くんが似合うと言ってくれた淡いピンク色のワンピースに、黒のコートを羽織る。
アイロンで髪を丁寧にストレートにして、ナチュラルなメイクを施す。