珈琲を淹れてテーブルに置くと、駿くんはいつも通りの笑顔で「ありがとう」とお礼を言った。

「うん。やっぱり笑真の淹れてくれる珈琲が1番美味しいなぁ」

「そう?ありがとう。それより夜はご飯何が食べたい?」

「ん~、そうだなぁ。今日は笑真も疲れちゃってるし出前でも取ろうか」

「全然私は平気だよ?病院食ばっかりで味気なかったんじゃないの?
それに明日から仕事なんでしょう?大変だね」

「仕事と言ってもまだこんな状態じゃああまり出来ることも少ないからさ。
親父が家で出来るデスクワークで良いって言ってくれて
全く会社にも迷惑かけたと思うよ」

責任感が強く真面目な駿くんの事だ。きっと今回の事で会社に迷惑をかけたと気にしているに違いない。

私の前で言葉にはしなかったけれど、彼はそういう性格だ。

駿くんの隣のソファーに座り、珈琲を口に運ぶ。…こんなに苦かったっけ?駿くんと付き合うようになってからはすっかり珈琲派に変わったと思ったのに、元々すごく甘党だった自分は無理をしていたんだなぁと自分で自分を嘲笑う。

けれどその苦さが今はほんの少し居心地が良くもある。