「私なら本当に大丈夫だから!私が悪かったんだから仕方がないよッ」

唇を噛みしめて悔しそうな顔をするのが印象的だった。 その冷たい指先で、真っ赤に染まる首筋の痕にゆっくりと触れるとズキンと痛みが走った。

「やっぱり俺も一緒に行くべきだった……。
こんな事をするなんてもう兄貴と笑真をふたりっきりで会わせる事は出来ない…」

「奏…本当に違うの。私の知っている駿くんはこんな事をする人じゃない。」

「そんなの俺の知ってる兄貴もだよッ!」

肩を強く握る、奏の大きい声が室内に響いた。

奏は昔から感情表現が豊かだったけれど、こんな風に頭ごなしに怒ったりする人ではない。
掴んでいた肩の力を緩めると、ふぅっと小さくため息を吐いて、天井を見上げた。

「あの時の駿くん…いつもと違ってた。
おかしかったの。確かに駿くんは私と奏が会っているのに気が付いていた。…きっと私がずっと奏の事を忘れられなかったのも…。
でも途中から話がすり替わって行った気がする」

「すり替わって行った?」

こくんと頷くと、奏は不可解な顔をする。