13 あなたの手を離す事が出来なかった。




今年は雨の日が多い気がする。

まるで誰かの涙のように降り続く雨。 心に落とされた雨は、降り止む事を知らずに静かに泣き続けた。

「ごめん…今は一人にしてくれ。必ず連絡はする」

それだけを言って、駿くんは私の顔を一切見なかった。自分の顔を両手で隠したまま、そんな彼が小さな子供に見えた。

私は彼を勝手に大人だと思っていた。

激しく怒る事も、取り乱す事もせずに、片親だっていう事を微塵も感じさせずにしっかりと生きてきて

家事も仕事もきちんとこなす人だと。その弱さを見ようともせずに、強い部分ばかりしか見て来なかった。

母親が居ない事は自分の人生にとって大した事ではない。そう言った彼の言葉を何故そのまんま受け取ってしまったのだろうか。

けれどいつだってちっとも寂しくないようにそう言っていたから。

「うわぁッ…。傘持っていったでしょう?何ずぶ濡れになってんの?
どっかに置いてきちゃった?」