段々と力が抜けて行って、その場に倒れ込む。 駿くんは私に馬乗りになり、それでも手の力を一切緩まなせなかった。

「あんなに良くしてやったじゃねぇか。いっぱい頑張ったじゃねぇか。
あんたの為にいい子で居てやったじゃねぇか。
なのに、どうして俺を捨てた?!
どうして奏を連れて行って、俺だけを置いていったんだ!?」

…違う。

これは私へだけぶつけられている感情じゃない。
そう気が付いた時に、苦しく顔を歪ませる駿くんの瞳からぽつりと涙が落ちた。

「結局あんたも親父を愛してなかったんだろう。あの男を本当は愛してたから…だから奏だけを連れて行ったんだろう…
あんたにとって俺って何だよ?!」

駿くんがこんなに感情を露わにしたのは初めてだった。
しかしそれは自分へとぶつけられた感情ではない事にとっくに気が付いていた。

苦しい…息が出来ない。頭が真っ白になっていく。声にならない声を振り絞って、やっと言葉を作る。