「奏が自分ひとりで何かを抱えているのはずっと知っていた。
それなのにあんなに一緒に居たのに、支えられるような私じゃなくって…本当にごめん」

ふわりと懐かしい香りがいっぱい私を包み込む。この胸の中でだけ、本当の自分を曝け出せた。

でも、本当の意味であなたを理解してあげられなくてごめんね。

一緒に居るのが幸せでこの時間が永遠に続けと願っていたのに、あなたの深い部分に触れられなくって、見過ごしてきた事。

全部、ごめん。

「やっぱり俺のせいじゃん。
全部、俺のせいにしていいよ。自分を責めないで」

そう言って、見つめ合う先、奏の大きな瞳がしっかりと私を見つめてくれていた。
どこか遠くでもない。確かにここに居る。
頬を押さえた冷たい手の先。柔らかい唇がゆっくりと私の唇へ重なって行く。

もう離さないでいて。その冷たい腕の中で考えていた事。 私は正しい人間ではない。きちんとした道もきっと選べない。

けれどもう、自分の気持ちにだけは嘘をつきたくない。
心の片隅、あなたではない人をずっと忘れられなかった。