美鈴ちゃんの余りの気迫に思わずハハッと苦笑いしてしまう。

不倫って…。
どんな会社にも不倫の噂は流れる。

勿論うちのショッピングモールにもある。私の直属の上司である鮫島課長が正にその人だ。

この人は何故かパートさんとの噂が昔から絶えない人だ。とびっきりのイケメンって訳でもダンディーなタイプでもないんだけど。それでも不思議とモテる人はいる。

「まぁ笑真には関係ない事かぁ、今が1番幸せな時だもんね」

美鈴ちゃんの言葉にびくりと肩が上がる。
バレぬように鏡を見ながら制服のリボンを結び直す。

「結婚がいいのは最初だけですよ~。まぁ笑真ちゃんの場合まだ同棲だからそれこそ1番良い時かもしれないけどね。」

「あ、ハハ。」

ふたりの言葉に笑う事しか出来ない。

先日、私は駿くんと住む家を一旦出た。会社の人には、誰にも話していない。こんな事誰にも言えない。


’私、結婚の事もう一度考えさせて欲しい…。’

勢いで出てしまった言葉だが、紛れもない本音だった。

それを聞いた駿くんは今までに見たことのないような苦しそうな表情をしていた。あんな顔をさせてしまうなんて最低だと分かっている。