11 あなたじゃない人をずっと忘れられなかった。




蝶が舞い、花が開きその蕾の上で楽しそうに遊んでいる。

上着を着なくても心地よい風が肌を通り過ぎて行って、陽気な空の下、どことなく人々が浮足立っている。

ニュースで知った桜の開花宣言。街を歩く時も下ばかり向いていたから、見過ごしてしまっていた。 ふと職場であるショッピングモールへ続く歩道を見上げたらピンクの花びらがゆっくりと舞っていった。

携帯を開くと、メッセージを受信していた。それを見てため息がひとつ。
画面を暗転させてスカートのポケットの中に押し込める。

「おはようございまーす」

「笑真、おはよう。」
「笑真ちゃんおはよーッ」

更衣室に行くと、そこにはこずと美鈴ちゃんが居て、制服に着替えている最中だった。

2人共今日早番だったようで、すっかり仲良くなったようで昨日のドラマの話を楽しそうにしていた。

「昨日は本当にドキドキしたぁ…」

「そうですよね。私もパパと見てハラハラしちゃいました。」

「えぇ!旦那さんと見るのはちょっときつくない」