今回見学に来た式場は最近出来たばかりで、お洒落な造りが売りのどちらかといえばシックな結婚式場だった。閑静な住宅街に囲まれていながらも、式場を覆う木々は美しく春の息吹を見せつけていた。

小鳥の囀りが聴こえる中模擬挙式が執り行われていた。ドレスやタキシードを着たモデルさんが、実際のチャペルの中歩いていく。

パイプオルガンの音がいつもより神聖に聴こえる。

「あのモデルさんが着ているドレス素敵だね」

小さな声で駿くんがぼそりと呟く。

「うん…そうだね」

模擬挙式とは言え、純白のウェディングドレスは勿論本物ので、美しいシルク生地と長いベール。見ているだけでも圧巻だった。

でも心は浮かないままだった。


料理の試食会まであって、味もぴかいちだった。
駿くんがこの結婚式場を気に入ってるひとつに料理があるのだと言う。

主役は自分たちだけど、招待する人たちは特別なもの。どうせ挙式をするのならば、皆が喜んでくれるものにしたいという彼らしい考えではあった。

そしてドレスの試着もさせてもらった。
ここでも優柔不断な性格が出てしまって、中々ドレスを選べなかった。

何百着もあるドレスの中から、あれもこれもと目移りをしてしまって、結局は最終的に駿くんが選んだドレスを試着させてもらう事にした。