麻子のハッキリとした言葉がぐさりと胸に刺さった。
途端に熱が上がっていって、顔がカアッと熱くなる。
「大体7年も会ってなかった元カレに会おうとも思わない。しかも勝手に姿を眩ませていきなり現れたかと思ったら自分勝手すぎでしょう?
そんな男の顔は一切見たいとも思わない。むしろ思い出しもしない。」
「そ、それは私だってそうだよ。私、奏の事なんてどうも思ってないよ」
麻子の吐き出された煙が、私の顔にかかる。
「ごほっ、ごほっ。ちょっと止めてよッ」
「何が’奏の事なんてどうも思ってないよ’だ。じゃああんたは何で私にこんな相談をしてるってのよ。
それにあんた高瀬駿と結婚するって決まってるのにちっとも嬉しそうじゃない。」
「そ、そんな事ない!駿くんは本当に優しくって、非の打ちどころがなくって私には勿体ないくらい完璧な人だもん。
いっつも私に正しい道を選択させてくれる、もん…」
正しいねぇ、と麻子が含みを持った言い方をして、唇に煙草を押し当てた。
そして、眉毛を下げてちょっとだけ困った顔をして私に問うんだ。



