麻子は私の話を遮らずに、ただただ無表情のまま頷きながら聞いてくれた。だから自分の中の感情がぶわっと溢れ出してしまった。
「ふぅん、成程ね。」
「とはいっても、もう奏とは会わないよ?本人にもそれはハッキリと言ったし」
「何で?」
「何でって…だって私は駿くんと結婚するし、今更奏に会ったってどうともなる事じゃないよ…。
私幸せなんだし、その幸せを壊すような事自分からする訳ないじゃん」
私の言葉に頬杖をつきながら、麻子はふぅっと大きなため息を吐く。
ビールのジョッキを置いたかと思えば、テーブルの端っこに置かれたシガレットケースに手を伸ばす。
麻子の吐き出した煙草の紫煙がゆっくりと天井に上がって行く。
「プロポーズされて結婚されたと言ってもまだ籍は入れてない。正式な夫婦でもない。それどころか結婚式の日取りもまだ決まっちゃいない。
それに最近は結婚しても3組に1組が離婚していると言うじゃないの」
「もぉ~…麻子何が言いたいのよ」
「別に。あんたの人生だから私にとっちゃまーったく関係のない事なんだけど、私があんたなら100パーセント自信をもって高瀬駿と一緒にいるのが幸せだと本当に思ってたら
いくら安田に誘われたって、安田には会いに行かない。」



