「だから高瀬駿が悪いって訳じゃないって言ってるじゃない。良い印象がないのは私の個人的な感想。
ぼやーってした所があるあんたにはお似合いなのかもしれないけど、私はああいう男は無理って話」

麻子と距離を置いていた理由を再び考えてみた。きっとそれは、奏から駿くんに乗り換えるような事をした罪悪感と

そして明らかに麻子が駿くんを心良くは思っていないと、何となく分かったからだ。

ぐいっとビールのジョッキを持って、一気に飲み干してこちらをジトっと見つめる。

愛想笑いをしなくて物事をハッキリと言う。人からは誤解されがちだが、小学校からの親友だ。彼女が私の事を大切に想っている事は知っている。

奏と別れた時も、1番心配をしてくれたのは彼女だ。

「でも幸せなんでしょう?」

「う、ま、まあね」

「何その歯切れの悪い言い方。あんた私になんか言いたい事でもあるんじゃないの?」

蛇のような目で睨みつける。きっとこの親友には色々な事がお見通しな気がする。

こずだって、私が奏と再会したのは知っている。けれど個人的に会っているとはさすがに言えない。

けれど誰かに吐き出してしまいたかった。自分の中に隠している、この感情を。そして誰かに叱ってもらいたかったのかもしれない。あんな完璧な婚約者がいながら、影で奏と会っているような自分を。