あんな優しく私の事を想ってくれる人へ、裏切り行為とも呼べる事…もうしたくない。

’好きな気持ちが変わったわけじゃない’何度も謝った奏が昨日言った事。そしてあの瞳。時折見せていた悲しい瞳がどうしても頭から離れなくて。

たとえ気持ちが変わっていなかったとしても、7年という長い時間は過ぎてしまった。その間に私にも奏にも色々な事があったはずだ。そもそも永遠なんてないと教えてくれたのは、あなたの方だったじゃないか。

考えたくない。もう何も。

駿くんの事だけで頭をいっぱいにしたいのに、土足で私の心に入り込んでくる自分勝手なあなたの事を、忘れてしまいたい。

午後1番に受付を済ませてしまおうと、駿くんが私を病院へ連れて行こうとした時。

ふらふらで足元のおぼつかない私を、背の大きな駿くんが支えてくれた。熱は下がらなかった。

上がって行く一方で頭が割れそうに痛かった。思考はきちんと回っていなかったと、思う。

「笑真、昨日夜出かけた?」

「え?」

玄関で駿くんがそう言うと、泥だらけになったスニーカーが目についた。

昨日帰って来てから着ていた洋服は洗濯機に入れて乾燥させた。シャワーも浴びて全てを洗い流したと思ったのに。

うかつな所は隠そうとしても隠し切れない。