「笑真はいつもひとりで何とかしようとするよなぁ。頼ってよ。
頼ってくれなきゃ俺居る意味ないじゃん」

「でも…駿くん疲れてるのに…」

「笑真はいっつも抱え込みすぎ。これから俺達夫婦になるんだよ?
少しも頼ってくれないのは悲しいもんだよ。」

笑うと線になるその瞳が悲しく揺れる。 確かに私はかっこ悪い所を駿くんには見せたくないって付き合い始めの頃からずっと思っていた。

素の自分を見せて、駿くんに愛される自信はない。

私は駿くんが思っているよりずっとだらしがなくって、きちんとしていない、駄目な人間だ。
彼が居ない時にこっそりと奏に会いに行ってしまうくらいには、正しくない人間なんだ。

「ごめんね、駿くん」

「そんな事位で謝らなくっていいよ。お粥食べれたら食べな?
ちょっと準備してから、病院に行こう。それまでゆっくりと休んでな」

そう優しく言って、駿くんは部屋の扉をゆっくりと閉めた。
「私は…一体何をやっているんだろう…」

駿くんの居なくなった部屋。思わず独り言が漏れる。

窓から見える空は、まだどんよりと薄暗く今にも雨が降りそう。

いい加減傘は買うべきだ。直ぐに失くしちゃうから、と言ってビニール傘で済まさずにちょっと良い物を買えばこんな私でも大切に出来るかもしれない。