『閉じている?』
あの時の私の言葉に、笑った後少しだけ寂しそうな顔をした。
私はあの日、奏と付き合い始めたあの頃から自分の心を奏へと明け渡した。 人にここまで自分の素の姿を見せる事は、今までの人生できっとなかった。
幼い頃から人とはちょっと変わった所のある子供だと言われていた。 普通の家庭に育っていたはずなのに、どこか神経質で昔から答えのない事を考えるのが好きな子供だった。
たとえば、どうして人は生きているの?だとか。人は孤独な生き物だ、とか。子供ながらに多くの疑問を抱え生きてきた。
ひとりきりじゃないと眠れなかったのもこの頃からの癖で
修学旅行や学校の行事のお泊りは苦手だった。 奏と一緒に暮らし始めた時も不安はあったが、不思議な事に彼の胸に包まれて、彼の香りに身を委ねていると安心して眠る事が出来た。
不安よりも安心が勝ったのは、私が彼へと心を預けていた証拠でもあった。 けれど奏は私へは完璧に心を許していなかったと今になり思う。
『うん。奏は誰にも心許していないような気がする。いっつも寂しそう』
『そんな事ないよ。俺笑真と一緒に居る時すっごく楽しいし、幸せだし』
私が不安を口にすると、必ず彼は強く抱きしめてくれて
その温もりの中で眠りに堕ちるのは何よりも安心出来た。



