01 あなたではない人の体温。




笑真(エマ)…」


私の名を呼ぶちょっぴり掠れた甘い声。ふんわりと柔らかい彼の匂いと汗が混じった香り。ごつごつとした指先で、頬を撫でるようにゆっくりと触る暖かい体温。

吐息。息遣い。快感に目を瞑りながら、小さく吐く息は宙の中舞って消えた。

私の上をゆっくりと動く体に合わせるように、じりじりと押し寄せる快楽に身をよじる。広い背中に腕を回して、爪を立てる。

自分の意志とは反してビクビクと身体は痙攣していく。

「ん……――」

少しだけ苦しそうに顔を歪ませたかと思えば、動きは徐々に速くなっていく。

その間、ベッドの横にある大きな窓に視線だけを寄せた。 風で紺色のカーテンとレースが同時にふんわりと揺れる。夜の闇の隙間から、柔らかいオレンジの光りが僅かに漏れる。



――今日は、月がとても綺麗な夜。

目を瞑ったのと同時に彼の汗ばんだ体が、私の体の上へと雪崩れ込んでいく。
それと同時に――

「ハァ…愛してるよ、笑真…」

まだ息の整わない中そう言って、私の体を抱きしめるのと同時に優しいキスを唇に落とす。奥二重の瞳を柔らかく細め、まるで愛しい物でも見るような優しい目をする。