こんなに側にいるのに、いつも何処か遠くを見ていて…その瞳には俺を一度も映さなかった それなのに…




どのくらい見つめ合ってただろう…




気が付けば、白くて細い指が俺の目元に触れていた



「な……かない…で……りく、と」




「………え」



聞き間違いかと思った



消えそうな声で確かに言ったんだ




小さく微笑んだ彩夢は、間違いなく俺を見ている




張り詰めていた気持ちが一気に緩みポロポロと涙が溢れた




「今…まで、ご…めんね……あ…りが、と…」




俺は感情を剥き出しにして、彩夢に覆いかぶさるように抱きしめると声を殺して泣いた




こんなに泣いたのは生まれて初めてだ