「楓」


大好きな声が私を呼ぶ。
...ただ、そんな声も段々と飽きてきた。


「どうしたの」

「帰ってくるの、最近遅くない?」


私は彼と同居している。
もちろん恋人関係にあり、お互い25歳だ。

そこそこ仕事にも慣れてきた時期。
でもまだまだ学ぶべきことがある。


「別に」


私はいわゆる、ヤンデレというものが大好きだ。
理由はひとつ、浮気の心配がないから。
それと、共依存の関係が理想的だから。

共依存とは、互いのことを必要としあう関係。
...素晴らしいではないか。


「寂しかったんだけど?」

「知らないよ、そんなの」

「ねーぇ、最近冷たい。もっと構って」


ぎゅっと疲れた体に彼が抱きつく。
一瞬振りほどこうかと思ったが、やめた。

そんなことをしたら本気で振られそうだ。

...勝手に依存して、彼には冷たくして、なんて。
恋する乙女達からは酷評ばかりだろうな。