上がった体温が体の先から冷えるのを感じながら、隣を見る。
前と何ら変わらない、冷たい美しさ。
ドックン、と心臓がうねる。
その大きな脈動によって送り出された多量の血液が恐ろしい勢いで走っているのを何となく実感した。
橘くんを見てる場合ではない、ノートを取らなければ、と急いでシャープペンシルに触れた。
「あ……」
それが軽い音をたてて落ちていってから、自分の手が震えていることに気付いた。
……しっかりしなさい!
自分を叱咤し、拳をぐっと握りしめる。
シャープペンシルを拾おうとすると、大きくてかつしなやかな手に包まれた私のシャープペンシルが私の目の前に差し出された。
雪のような肌に節々が桜色のその手の持ち主は、橘くん。
抑えた震えが再発する。
ちらりと顔を覗くと早くとれと言わんばかりの冷ややかな視線。
その瞳は硝子玉のように感情が一定で、ただ規則的にきらきらと輝いていた。
お礼の意味を込めて首を縦にふると、シャープペンシルを受け取る。
受け取るとき少し手が触れて、大げさに私の手が跳ねた。
あまり気にしていないことを願う。
イジメられている、なんてことは誰にも言っていない。
千稲ちゃんを除いて。
あの子にも自分から言ったわけでは無かったが、私の調子の変化に気づき、問い詰めてきたのだ。
そして、白状した。
いつも傷を優しく撫でてくれて、慰めてくれて、どちらが年上かわからない状態であった。
だから、本当に、あの人には感謝で一杯なのだ。



