それはもう中学生のときに殆どの人が知っていたことだ。
授業は度々早退するし、体育は毎回休んでいるし、特別にエレベーターを使っているし。
何なら高田さん達が私を殴っている途中に卒倒したこともあった。
まあ流石にそのときは高田さんも怯んだようだが、止めはしなかった。
私が心臓病を患っているのは周知の事実で、休むのは違和感が無かったので、割と心が軽く休むことができた。
心臓病が、私を守ったのだ。
キーンコーンカーンコーン……。
本令のチャイムで、やっと高田さんも着席し、担任が教室へ入ってくる。
頬がこけ、ひ弱そうな印象を受けるその教師は私を見ると少し体を跳ねらせ、何事も無かったかのようにカサカサの唇を動かした。
……ったく、どいつもこいつも。
初めは、イジメがとても辛かった。
自分自身の存在を否定され、体は常に鈍い痛みが走り回り、心身ともにたくさんの傷が入った。
透明になりたい。
そう思った。
でも段々と感覚が麻痺してきて。
どうせこの脆い身体、すぐに壊れるだろうと諦めた。
「きょ、教科書5ページを開いて」
教壇に立つのが初めてなのかというくらい籠もって聞きにくい声を、何とか理解して焦った。
私は教科書を持っていない。
これでは、授業の途中に教師に注意されてそれが種子となるのが読めてしまう。
応急処置としてノートを積んで誤魔化しているが、見つかるのも時間の問題。
頬杖をつき、素知らぬ振りをして脳内大荒れだ。
ああ、どうしよう。
コツン、と肘に硬いものが当たりその当たったものを見て私の素知らぬ振りは呆気なく終わった。
そこには、教科書が。
そんなファンタジーが起きる訳がない、私が幻を見ているだけだ。
もう一度視線をやる。
……うん、ある。
どういう原理かわからないが、使わせて頂こう。
ごめんなさい、と何かに謝り、教科書を開くと、見覚えのある紙が宙を舞った。
慌ててそれを掴む。
そこに書いてある文字を見て急激に体温が上がり、すぐに教科書の一番最後に挟んだ。
これがあるってことは、まさか。



