「言っとくけど、授業にも出てよね」
遥斗がいつもの落ち着いた声で研いだ言葉を、容赦なく刺してきた。
……やっぱり、エスパーか?
恨みを込めた目で精一杯睨むが、動揺1つ見せずに追い打ちをかけられる。
「学校に確認すればわかるから」
「わかったわかった。取り敢えず知成さんは帰ってください」
「大丈夫。約束は守るよ」
この前までの粘りは何だったのか、別人と疑うくらいあっさりと帰っていった。
……なんなんだ、あの人。
二重人格なの?
「俺も自分の部屋戻る」
ズボンのポケットに手を突っ込んで、クールに立ち去ろうとした遥斗の首根っこを慌てて掴む。
「っ!おい、天藍姉!」
「あ、ごめん、つい」
わざとしたわけではなかったけど、何だか少し仕返しできたみたいで頬が緩む。
「ねえ、千稲ちゃんどんな感じだった……?」
明日くらいにはお見舞いに行きたいのだが、体調がよくなければ行っても迷惑になる。
どーせ、このラブラブカップル、今日もお見舞い行ってるはずだ。
「ああ、まあ、元気そうだった。お見舞い行く必要も無いぜ」
……最後の言葉に引っかかりを感じる。
私にお見舞い行ってほしくないみたいなニュアンスにとれてしまう。
「何、その言い方。喧嘩でもした?」
「え、別に」
「ふぅん……」
この技は遥斗に効いた試しがないが、ダメ元だ。
口を割ってはくれないか。
「じゃ、俺、自分の部屋戻るから」
……逃げた。
これは、隠してるな。
明日行くから、どうせわかることなのだが。
……まさか、ね。
何となく、胸がざわついた。



