「……そう」
 
実兄同然の親戚と、実父を同時に失い、さらにその失った理由が両者がいがみ合っていたからというなんとも複雑なものだというのに、麗華は私以上に冷静だ。

心の傷は相当な筈なのに、それを取り繕って事実を伝えてくれている。

私が昂ぶってどうするんだと一先ずクールダウンした。

「じゃあ、聞き方変える……というか、ストレートに聞くわよ。千稲ちゃんや橘くんの秘密は、どこにも漏らしてないわよね?」

「僕らが知ってる限りは、誰も」

瑠璃さんは戸惑いながら言った。

私があまりにも必死すぎるからだろうか。

「俺も……。琥珀兄がこれに触れてきたけど」

遥斗が、私が千稲ちゃんの誕生日にプレゼントしたミサンガを指差す。

ピクリと瑠璃さんと麗華の肩が震えた。

「何も欲求しなかった。多分、ここから千稲のDNAが採取できるかもしれないと思ったんだろうけど、何故か途中で止めた」

恋藍のものと照合しようとしなかったのか?

あれだけ憎んでいた人たちを追い詰める材料を求めていたのに。

私としてはとてもありがたいのだが、橘くんの今までの苦しみを思うと凝りが疼いて仕方が無かった。

ついでに橘くんの行方を尋ねたかったが、それだと何だか私が彼のことを気にしすぎているように思われそうで恥ずかしかったので、やめておいた。

「あの……ね」

一番初めに伝えないといけない橘くんがいないが、わざわざ呼び出す訳にもいかない。

3人は私が何を言おうとしているのか測りかねるように小首を傾げ、私を注視する。

6つの目が私を射抜く。

そんな筈ないのに、全身が痛い気がした。

「ずっと……騙してきて。嘘ついてきて、ごめんなさい」

何も知らないようなその視線が怒りに染まる前に頭を下げた。

そんな視線を見たくない。

謝ったって赦してもらえるはずがない、でも。

もしかしたら、だなんて浅ましい考えが過ぎってしまう私は、やっぱり汚れているのだろう。

一縷の望みが増幅して、駄目だとわかっていても次第に願いへと膨らんでしまう。

私は彼らが大好きで、大切で、いなくてはならない存在だから。

それでやっぱり、彼にだけは少し違う感情を抱いていて。