散々泣きじゃくった後、瑠璃さんが呼んだ担当医と母が病室に来て私の病状について詳しく説明してくれた。

私はあの日、倒れた後ずっと意識を取り戻すことは無かったそうだ。

すると運良くドナーが見つかり、心臓移植を行ったとのこと。

私は血液型のことが気になり尋ねたが、そのあたりは最新の技術でなんとかなったそう。

近年の技術の進歩の著しさに驚いたと同時に若干の恐怖を抱いた。

犯罪が起きても証拠偽造、証拠隠滅し放題、無法地帯と化するのではないか。

完全犯罪やり放題だ。

それはともかくとして、まだ、橘くんに会ってない。

彼とは、若干喧嘩別れのような感時になってしまったから、謝りたいのに。

謝罪だけじゃなく、感謝も、この気持ちも、全部、伝えたい。

まあ、高校3年に進級して大学受験などを視野に入れると忙しくなっているのかもしれない。

そうなれば、一緒に勉強するだなんて悠長なことはできなくなるのかもしれないな、なんて思うとチクリと胸が痛んだ。

もう少しすれば学校にも行けるだろうし、お礼や謝罪はそのときでもいいか。

ずっと寝ていた私が起きた、しかも心臓移植に成功したって伝えたらどんな反応を見せてくれるのだろう。

クールそうに見えて、意外と動揺しやすいから面白いかも。

慌てふためく様子を想像してくすりと笑った。

医者が退室し、遥斗、麗華、瑠璃さん、そして私の4人になると、徐に遥斗が口を開いた。

「……あのさ、天藍姉……」


***


「……はぁああああ!?水樹さんが捕まった!?」

「天藍ちゃん、病み上がりだよ。落ち着いて」

「落ち着けるものですか!何やってんのよあの人!」

水樹さんが捕まれば、彼が高田華斗を殺した動機が露呈する。

更に彼自身、クローン作成反対派という法律になぞった立場にいたのに一瞬にして罪人ではないか。

そうすれば、千稲や橘くん、実母の秘密が世間に晒されてしまう。

こんなに沢山のものを賭けて、失って守ってきたのに。

「違う、天藍。令お兄ちゃんは秘密を守るために自首したの。だから今、お父さんを殺した動機は怨恨ではなくて、衝動的なものとされてるの」