交錯白黒


何故なら、日本に来てからの琥珀の検査、問診は全て櫻子が行っているからだ。

それ以外、更に琥珀の記憶にも無いようなのできっと物心つく前の幼いときに行ったものなのだろう、と予想したとき、必然的にレイが問診を行った場所はそのアメリカの研究所になる。

今のところ、xの情報がゼロなので高田華斗との関連性が全くわからない。

だが、実際に犯行現場、と言えば言い方は悪いが、事実そうなのでそう表現させて頂く。

実際に犯行現場に勤めていた人から話を聞けるということになるため、非常に有益な情報が入ることが期待できる。

例えば、華斗の復讐、つまり人間クローン作成に賛同していた人物、とかね。

人間クローン作成は違法だから、勿論公にはできない。

華斗が死に、その秘密が明るみに出そうになっている今、口止めをしてくるのは焦っている証拠。

そしてその秘密を口止めする必要性のある人物像はクローン作成に深く関わっていた人物。

だから、そういう人を思い出して、一人でもピックアップしてくれたらxに近づけるのではないか、と思っている。

ブーッブーッ

「わっ」

僕の手の中のスマホがバイブし始め、そちらに意識が行き届いていなかったため驚いてそれを放ってしまう。

着信は天藍ちゃんからだった。

「瑠璃さん?今どこにいるんですか」

先生が生徒を注意するときのように、怒ったような呆れたような声だった。

「あ、いや、えっと……」

沈黙の間にポン、と何かがぶつかるような間抜けな音がした。

「もう……部屋に戻ってみたらいないんですから。びっくりさせないでくださいよ」

「は、はは、ごめんごめん」

「……橘くんは?」

やや控えめにそう聞いた彼女はきっと照れ臭いのだろう。

電話口の向こうで少し赤くなっている様子が容易に目に浮かぶ。

「琥珀もこっちにいるよ。大丈夫」

ほ、という吐息が聞こえてきて、僕は彼女の強がりに吹きそうになった。

「ちょっと代わってもらえますか」

「え……?うん」

なんだか少し彼女のイメージに無いのでちょっと意外だったが、まあ、あくまで僕のイメージだ。

あてにならないのかもしれない。

僕は琥珀に携帯を渡し、高田さんの様子を見る。

「あ、令くん?ごめんね、遅くに。今大丈夫?うん、うん……」