その代わり、抱きしめれば折れてしまいそうな頼りない体が僕のほうに倒れてきて。
その後ろには顔色が悪いのか、冷たい顔をした琥珀がいた。
倒れてくる重みを潰さないよう柔らかに抱き止める一方、琥珀の顔色の悪さに目を瞠る。
逆光でそう見えるだけと言われればそれまでだが、青いを通り越して、黄土色のような、要するに死人のような顔色なのだ。
「どうしたの」
「話が進まないから強引に黙らせた」
「それはわかってるよ。琥珀がこの子を無意味に気絶させるわけ無い」
漫画でよくある、首の裏をトン、だ。
「僕が言ってるのは、お前の顔色。いくらなんでも悪すぎる」
「逆光なだけじゃねぇの」
そう吐き捨てるように言って僕に顔を見せまいとするように背ける。
「ならいいけど、あんま無理すんなよ」
僕は畳の上に気を失った天藍ちゃんを寝かせ、冷えないように上から毛布をかける。
ハラリと横に垂れた前髪に気づき、好奇心を擽られて彼女の顔面にかかっている髪の毛を人差し指で全て払った。
「ふふっ、やっぱこうしてみると、琥珀の面影あるなぁ」
すやすや眠っているときの琥珀にそっくりだ。
反っている睫毛は長く、白い肌は陶器のよう、ぽってりした唇も可愛らしい。
こんなに整った顔をしているのに隠すなんて、やはり勿体ないような気がする。
「瑠璃はさ、最近こいつの様子が変だとは思わないのかよ?」
「えー?」
確かにさっきは興奮気味だったようだったし、僕らとの繋がりが判明したあとの態度は少し変だったが、それでも原因はわかっているし、気になるほどでもないだろう。
僕はそのくらいにしか思っていなかったのだが。
「いや、お前が気にならないなら……忘れろ」
琥珀はそう言ったが、僕は鈍感だと言われることが多々あるので、少し気にかけて観察しておこうか。
「どうする?このままじゃ天藍ちゃんの意見を無視して強引にことを運ぶしかないんじゃない?」
「そうだな……俺はそうするつもりだ」
「えっ」
てっきり何か他の案があってこんなことをしていたのだと考えていた僕は意表をつかれ、押し出されたように声を漏らす。



