「……何がよ」
ふふっと天藍ちゃんは艶美に微笑する。
わかってるんだろ、どうせ。
「なら……x、誘き出さない?」
「xが華斗の死を知らないことを利用する……ってことですか」
「そゆこと」
例えば、高田さんに華斗の話をしてもらうとする。
それに反応して何かことを起こしたxを見つけて捕まえる。
今はxの目的もわからず、こんな大雑把な計画だがもう少し綿密に練ればそう悪くない作戦の筈。
華斗の話も聞けて、僕たちにとっては一石二鳥という訳だ。
「私は反対。私達だけならまだしも、何も知らない麗華を巻き込めない。危険だわ」
「俺もあんまり乗り気じゃねぇ。失敗したときのリスクがデカイ」
僕の予想に反して彼らの批評は中々辛口なものだった。
「うーん、でもさぁ、xは華斗が何をしたか、ってことを知っていて、隠蔽しようとしてるってのが僕らの説でしょ?ってことはさ、僕らが如何にもそれを全部知っているふりすれば、情報元を調べるために直接には手を下さないけど、何かしらアクションがあるっていういいとこ取りができるんじゃない?」
「駄目よ。麗華は何も知らないかもしれないのよ。なのに急に自分の父親が犯罪者だなんて告げられたら……どう思うか」
まるで自分のことのように辛そうに天藍ちゃんの顔が歪んだ。
「……じゃあ、高田に直接聞けばいい」
「何を?」
「協力してくれるかどうかを」
「馬鹿言わないで!聞いたら協力するって言うに決まってるわ!」
「落ち着いて!天藍ちゃん」
机を叩き、今にも琥珀に掴みかかっていきそうな獰猛を剥きだしにした彼女の肩を抑える。
「瑠璃さん、麗華に危害が加わってもいいっていうの?」
「そんなこと言ってないじゃないか。xは高田さんに"周りの人間を"なんて回りくどいことを言っている。xは高田さんに危害を加える気はないんじゃないの?」
「だとしても、わかんないじゃないですか!」
華奢な肩を上下させ、乱れた髪を直そうともせずに僕の肩をがっと掴んだ
気迫を通り越して、殺気立ってすらいるような彼女の追い込まれ方に流石に違和感を覚える。
彼女の手に力がはいり、肩が圧迫され、骨が軋む。
僕が耐えきれず顔を歪めてしまった途端、一気にその力から解放された。



